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バイオマス由来資材の土壌還元事例(2) 林地施用で留意すべき関係法令と樹木生育・土壌・水質への影響362

Case Studies on Returning Biomass-Derived Materials to Soil (2): Relevant Laws and Effects on Tree Growth, Soil, and Water Quality in Forest Land Application

Updated by 仲川泰則 on October 29, 2026, 7:05 PM JST

仲川泰則

Yasunori NAKAGAWA

編集プロダクション雨輝

森林科学アドバイザー/大学院時代より森林生態系の物質循環に関する研究に取り組み、博士(農学)を取得。大学院修了後は、日本学術振興会特別研究員として湿地林の物質循環をテーマに研究を行った。その後、自然再生事業やバイオマスエネルギー事業にも携わった。

※前回のコラムはこちら
バイオマス由来資材の土壌還元事例(1) ペレット化やドローン活用で造林地散布を省力化できるか

木材を林外へ搬出すると、養分の持ち出しを伴う。FIT/FIP制度のライフサイクルGHG既定値では、当面、国内木質バイオマスの伐採齢20年以下の主伐をエネルギー利用目的とみなしている(※参照1)。この区分のもとで短伐期収穫が繰り返された場合、土壌の養分枯渇や有機物の損失は十分起こり得る。それを補う有効な手段として、バイオマス由来資材を林地に還元することが挙げられる。前回は散布方法を紹介した。今回は林地還元の際の留意点を扱う。

法令上の留意点

バイオマス由来資材を安全に利用するため、主な関係法令とその目的を表1に整理した。

表1.バイオマス由来資材の利活用に関係する主な法令(出典:環境省〈※参照9〉を参考に、現行法令〈※参照2~8〉に基づき作成。土壌汚染対策法は追加した)

バイオマス由来資材には廃棄物として発生するものも多い。利用に当たっては、原料と用途によって法令上の取り扱いが異なることを確認する必要がある。

肥料には有害成分の含有量規制があり、植害試験が必要なものもある。一方、土壌汚染対策法は人の健康被害の防止が目的で、土壌含有量基準や溶出量基準を定めている。基準を満たしても樹木や森林生態系への安全性まで保証されるわけではない。実際に林地に還元する場合、重金属等に加え、pH、養分バランス、土壌生物や水質への影響も検討する必要がある。

【燃焼灰】pH上昇と成長抑制

燃焼灰の林地還元は北欧で進んでいる(※参照10,11)。燃焼灰は強アルカリ性で、アルカリショックと呼ばれる土壌pHの急上昇や粉じんに注意する必要がある(※参照12,13)。アンモニア態窒素を含む資材と混ぜるとアンモニアが揮散するおそれもある(※参照12)。堆肥化原料に加える際は、体積比5%以下を目安とする資料がある(※参照12)。

原料への塗料混入などで燃焼灰の重金属含有量が高くなる場合がある(※参照10,11)。長倉ら(※参照14)は燃焼灰混合の育苗培地でスギ25%区、ヒノキ10%・25%区(ともに体積比)に成長抑制を認め、pH上昇を主因と推察した。使用した燃焼灰の分析値を土壌汚染対策法(※参照8)の土壌の基準と比較すると、六価クロム溶出量は基準を超え、それ以外は基準値未満であったが、スギの全灰混合区で葉中カドミウム濃度が有意に高まった。葉中のFe、Mn、Zn等の重金属やAlの含有量が高まる個体もあった。育苗培地への混合率はスギ10%、ヒノキ5%以下が目安とされた。山田ら(※参照15)の植栽後3成長期の調査では、スギ25%区は他区と同程度まで回復したが、ヒノキ10%・25%区は植栽後の枯死が多かった。

【バイオ炭】施用量の目安と窒素動態

バイオ炭も土壌pHを上げる場合があり、養分保持や土壌物理性改善が期待される(※参照16)。飛散を防ぐには強風時を避け、水分を含ませて散布することが勧められている(※参照16)。農地では施用量の目安があり、畝・溝や表層土壌に混合する場合は土壌の10~30%(体積比)程度、堆肥化の場合は原料の20%程度とされる(※参照17)。農地土壌に竹炭を用いた試験においては、未熟土で土壌pH6.5程度までの上昇を許容した場合は2%の混合が上限目安で、pH6程度までなら施用不可とされる(※参照18)。

国内のコナラ二次林では、バイオ炭施用後に無機態窒素濃度や純窒素無機化速度が低下した例がある(※参照19)。同一の森林で土壌呼吸を長期観測し、バイオ炭施用後に短期的な微生物呼吸の増加が認められた例もある(※参照20)。Antonangeloら(※参照21)の総説は、果樹や森林にバイオ炭を施用した例を挙げている。

【下水汚泥】長期の効果と水質への影響

米国では処理済み下水汚泥(biosolids)の農地への還元が進められている(※参照22)。ワシントン州の森林では、1973年に一度施用された調査区で、約50年後も樹木の成長促進や土壌への影響が観察されている(※参照23)。カナダやニュージーランドにも森林施用例がある(※参照24,25)。ニュージーランドのラジアータパイン林では、反復施用区の18年生時幹材積が対照区より27~36%大きい一方、材の密度や剛性は低かった(※参照25)。

国内にも下水汚泥の農地利用例が多く(※参照26)、家畜ふん尿などとの混合発酵も行われる。樹木ではアカエゾマツ苗への施用例(※参照27)や、汚泥堆肥を苗畑に施用して土壌生物の変化を調査した例(※参照28)がある。藤田(※参照29)は60年生のヒノキ林で施用後の降雨により表面流去水のpH、アンモニア態窒素やリン濃度が上昇したと報告し、急峻な林地への施用は好ましくないとした。

下水汚泥肥料では重金属の管理が重要で、農林水産省は測定の手引書を公表している(※参照30)。国土交通省も肥料利用を推進し(※参照31)、2026年3月に「下水汚泥資源の肥料利用に関する検討手順書(案)」を改訂した(※参照32)。

【消化液】アンモニア揮散と混合施用

消化液の農地施用例は多い(※参照33)。Sixtら(※参照34)はバイオ炭との混合でアンモニア揮散が減るとは限らず、増加する場合もあることを示した。著者らは乾物率や粘性の上昇による土壌浸透の阻害を一因と推察している。樹木ではヤナギ挿し木苗への消化液施用(※参照35)や、ポプラ苗に燃焼灰と消化液の固形分を混合施用した温室試験(※参照36)がある。後者では混合比により生育が異なり、灰の割合が高いほど混合資材中の窒素濃度が低下した。消化液には全窒素の半分以上がアンモニア態窒素であることが多く(※参照37)、高pH資材との混合には注意が必要である(※参照12)。

スコットランドでは埋立地や炭鉱跡地などで、堆肥や消化液を脱水した固形分を約50cmの深さまで混合して造林した例がある(※参照38)。樹木の生育は改善したが、施用量を増やしても効果には限界があり、排水不良や雑草も制約条件になった。国内でも神戸市立森林植物園で桜や梅の土壌改良に消化液を利用した実践例がある(※参照39)。

バイオマス由来資材の森林への施用事例は地域や資材に偏りがある。燃焼灰は北欧、下水汚泥は北米やニュージーランドなどで利用される一方、国内には育苗培地や試験地の例が多い。上記で挙げた①燃焼灰による成長抑制、②バイオ炭施用後の窒素動態の変化、③下水汚泥の反復施用に伴う材積増加と材の密度低下、などから、資材中の養分含有量や有害物質含有量だけで樹木や土壌環境への影響を判断できないことがわかる。短伐期バイオマス造林では、pHや水質に加え、乾物生産量や反復施用による土壌・樹木への影響も確認しながら実施する必要がある。(編集プロダクション雨輝・森林科学アドバイザー 仲川泰則)

※参照
(1) 経済産業省資源エネルギー庁バイオマス持続可能性ワーキンググループ(2026)FIT/FIP 制度におけるバイオマス燃料のライフサイクルGHG排出量の既定値. (閲覧:2026年10月13日)
(2) バイオマス活用推進基本法(平成21年法律第52号). e-Gov法令検索. (閲覧:2026年10月13日)
(3) 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(平成12年法律第116号). e-Gov法令検索. (閲覧:2026年10月13日)
(4) 循環型社会形成推進基本法(平成12年法律第110号). e-Gov法令検索. (閲覧:2026年10月13日)
(5) 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号). e-Gov法令検索. (閲覧:2026年10月13日)
(6) 肥料の品質の確保等に関する法律(昭和25年法律第127号). e-Gov法令検索. (閲覧:2026年10月13日)
(7) 家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律(平成11年法律第112号). e-Gov法令検索. (閲覧:2026年10月13日)
(8) 土壌汚染対策法(平成14年法律第53号). e-Gov法令検索. (閲覧:2026年10月13日)
(9) 環境省. 廃棄物系バイオマスの利活用に関連する法制度の概要. (閲覧:2026年10月13日)
(10) Hannerz, M.(2019)NORDASH takes a broad perspective on ash recycling. News & Views, Silvinformation AB. (閲覧:2026年10月13日)
(11) Pitman, R. M.(2006)Wood ash use in forestry – a review of the environmental impacts. Forestry. 79(5), 563–588.
(12) Saunders, O.(2018)Guide to Using Wood Ash as an Agricultural Soil Amendment. University of New Hampshire Cooperative Extension. (閲覧:2026年10月13日)
(13) Emilsson, S.(2006)International Handbook: From Extraction of Forest Fuels to Ash. Swedish Forest Agency. (閲覧:2026年10月13日)
(14) 長倉淳子・小笠真由美・山田毅・平井敬三(2018)スギ、ヒノキコンテナ苗育苗培地への木質バイオマス燃焼灰混合が苗木の成長と養分状態におよぼす影響. 森林総合研究所研究報告. 17, 75–84.
(15) 山田毅・長倉淳子・平井敬三(2021)木質バイオマス燃焼灰混合培地で育成したスギおよびヒノキコンテナ苗の植栽後の成長. 森林立地. 63(2), 31–38.
(16) 脱炭素に向けた農林業環境研究コンソーシアム編(2025)バイオ炭の農業利用事例とその活用ガイドブック. (閲覧:2026年10月13日)
(17) 日本バイオ炭普及会. 土壌改良用バイオ炭の施用目安. (閲覧:2026年10月13日)
(18) 農林水産省HP. バイオ炭の施用量上限の目安について・土壌炭素貯留効果のある炭の施用による農作物の生育への影響の調査. (閲覧:2026年10月13日)
(19) Yasuki, N., Saso, W., Koizumi, H., Iimura, Y., Ohtsuka, T., & Yoshitake, S.(2024)Decrease in Inorganic Nitrogen and Net Nitrogen Transformation Rates with Biochar Application in a Warm-Temperate Broadleaved Forest. Forests. 15, 572. https://doi.org/10.3390/f15030572
(20) Yoshitake, S., Enichi, K., Tsukimori, Y., Ohtsuka, T., Koizumi, H. & Tomotsune, M.(2025)Long-Term Effects of Biochar Application on Soil Heterotrophic Respiration in a Warm–Temperate Oak Forest. Forests. 16, 489. https://doi.org/10.3390/f16030489
(21) Antonangelo, J. A., Sun, X. & Eufrade-Junior, H. J.(2025)Biochar impact on soil health and tree-based crops: a review. Biochar. 7, 51. https://doi.org/10.1007/s42773-025-00450-6
(22) U.S. Environmental Protection Agency. Land Application of Biosolids. (閲覧:2026年10月13日)
(23) BioCycle. Birth Of Biosolids Application To Existing Forest Stands. (閲覧:2026年10月13日)
(24) Government of British Columbia. Biosolids Forest Fertilization. A Complementary Mid-Term Timber Booster? (閲覧:2026年10月13日)
(25) Wang, H., Kimberley, M. O. & Wilks, P. J.(2013)Economic analysis of a pine plantation receiving repeated applications of biosolids. PLOS ONE. 8(2), e57705. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0057705
(26) 農林水産省HP. 国内資源由来肥料の活用事例集(2.下水汚泥資源). (閲覧:2026年10月13日)
(27) 氏家雅男・門松昌彦・菅田定雄・鎌田暁洋(1987)下水汚泥の苗畑への施用. 北海道大学演習林試験年報. 4, 16–17.
(28) 新島渓子・藤田桂治・小川眞(1993)汚泥堆肥類の施用に伴う土壌生物の変化とその影響. 森林総合研究所研究報告. 365, 109–130.
(29) 藤田桂治(1988)有機性汚泥の施用と問題点. 森林立地. 30, 17–21.
(30) 農林水産省HP. 汚泥肥料中の重金属管理手引書 改訂第1版. (閲覧:2026年10月13日)
(31) 国土交通省HP. 下水汚泥資源の肥料利用. (閲覧:2026年10月13日)
(32) 国土交通省HP. 下水汚泥資源の肥料利用に関する検討手順書(案)(2026年3月改訂版). (閲覧:2026年10月13日)
(33) 一般社団法人日本有機資源協会. バイオ液肥活用先進事例集. (閲覧:2026年10月13日)
(34) Sixt, T., Pacholski, A., Winkhart, F., Jaufmann, E., Schmid, H., & Hülsbergen, K.-J.(2025)Does woody biochar mixed with liquid organic fertilizer reduce ammonia volatilization following field application? Nutr. Cycl. Agroecosyst. 131, 165–184. https://doi.org/10.1007/s10705-025-10415-7
(35) Holm, B. and Heinsoo, K.(2014)Biogas digestate suitability for the fertilisation of young Salix plants. Baltic Forestry. 20, 263–271.
(36) Zuševica, A., Adamovičs, A., Dūmiņš, K., Vendiņa, V., Žīgure, S. & Lazdiņa, D.(2023)Soil fertility improvement with mixtures of wood ash and biogas digestates enhances leaf photosynthesis and extends the growth period for deciduous trees. Plants. 12, 1152. https://doi.org/10.3390/plants12051152
(37) 中村真人・折立文子・藤田睦・北川巌・吉原茜(2025)メタン発酵消化液の肥料としての特徴と利用システム. 農研機構研究報告. 20, 11–20.
(38) Wall, M.(2016)Forestry Trials of Compost & AD in Central Scotland. Technical Development Report TDJR130.
(39) NPO法人樹木研究会こうべ. 2026年3月1日持続可能な土壌改良実験. (閲覧:2026年10月13日)

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