Converting Unused Forest Biomass into Energy:Hita City’s Woody Biomass Strategy and Forest Resource Circulation
Updated by 金本望 on February 09, 2026, 9:12 PM JST
Nozomi KANEMOTO
株式会社リーフレイン
2021年(一社)日本森林技術協会に入協。ODA事業森林分野に複数従事し、GHG排出削減量の計算やプロジェクト運営管理を担当。2024年に独立し、現在はフランスを拠点として森林分野で活動中。
日本の国土の約3分の2は森林である。森林面積は約2,502万ヘクタール(2022年3月末時点)に及び、そのうち人工林は約1,009万ヘクタールを占めている。戦後の拡大造林政策により人工林が増加し、現在の日本は多くの木材資源を有する国となった(※1)。一方、人工林を健全な状態で維持するためには、植林後に下刈りや間伐などの施業を継続的に行うことが不可欠である。しかし、木材価格の低迷などを背景に、こうした森林整備を十分に実施することが難しい状況が生じている。
同時に、日本はエネルギー事情にも大きな課題を抱えている。日本のエネルギー自給率は2022年度で12.6%(※2)と、主要先進国の中でも低い水準にとどまっている。化石燃料への依存度が高い構造のもと、燃料の輸入価格が電気料金に大きな影響を及ぼしてきた。森林には利用されていない木材資源が存在する一方で、地域ではエネルギー供給の不安定さや価格上昇が課題となっている。この二つの問題が、本稿の出発点である。
・森林の荒廃
人工林は、計画的な施業によって維持されることを前提として造成された森林である。下刈りや間伐などの森林整備を適切に行うことにより、森林は水源涵養、防災、生物多様性の保全といった多面的機能を発揮する。適切な手入れが行われない場合、森林の健全性が損なわれるおそれがある。
・林業の採算性低下
国産材は、輸入材との競争のなかで価格面の課題を抱えてきた。木材価格の低迷は、森林整備や伐採に必要な費用を十分に回収しにくい状況を生み、林業経営の採算性を低下させている(※3)。
・地域経済と人材の空洞化
林業の停滞は、山間地域における雇用機会の減少や担い手不足にも影響を及ぼす。森林整備を担う人材の確保は、地域の持続可能性を考えるうえで重要な課題となっている(※4)。
※参照1:林野庁「令和6年度 森林・林業白書」(閲覧:2026年2月3日)
※参照2:経済産業省『News Release』(2024年)P1(閲覧:2026年2月3日)
※参照3:農林水産委員会調査室 稲熊利和 (2010),『林業活性化の課題 ~路網整備と木の徹底的な利用の促進~』(閲覧:2026年2月3日)
※参照4:林野庁「林業労働力の動向」(閲覧:2026年2月3日)
森林整備が進まない要因の一つは、施業に伴って発生する材の価値が低く、収益につながりにくい点にある。そこで解決の選択肢として注目されているのが、木材をエネルギー資源として活用する「木質バイオマス」だ。木質バイオマス発電は、太陽光や風力と異なり天候に左右されにくく、燃料を安定的に確保できれば継続的な運転が可能な再生可能エネルギーと位置づけられている(※5)。
固定価格買取制度(FIT)においては、木質バイオマスを由来別に区分し、間伐材や林地残材といった未利用材を用いる発電に対して、より高い売電価格を設定している。この仕組みにより、発電事業者は未利用材を継続的に調達する経済的なインセンティブを持ち、林業側には新たな木材需要と収入機会が生まれる。

未利用材由来の木質バイオマスは、温室効果ガス排出の抑制に寄与するだけでなく、林業の採算性改善や森林資源の循環利用を後押しする可能性を有している。
※参照5:森林科学『未利用木材の発電利用は持続的たり得るか?』(2018)P14(閲覧:2026年2月3日)
大分県日田市は古くから林業が地域産業を支えてきた。一方で近年は、山林に未利用の木材が残される状況が課題となっていた。こうした背景のもと、同市では、未利用材の解決策として木質バイオマス発電を活用した取り組みが進められている(※6)。
この取り組みは自治体だけで完結する施策ではなく、民間事業者が設備運営・燃料調達・電力供給、さらには再造林までを一体的に担うことで、実効性のある資源循環を実現している。資源エネルギー庁の顕彰事例では、代表申請者を株式会社モリショウ、共同事業者を株式会社グリーン発電大分、日田グリーン電力株式会社、日本フォレスト株式会社とし、連携市区町村を日田市としている。
発電の中核を担うグリーン発電大分は、地元で伐採された未利用材(山林未利用材チップ)を一定水準の価格で買い取り、燃料として発電を行う。2013年11月、未利用材を燃料とする木質バイオマス発電所が稼働を開始。発電出力は5,700kW、年間発電量は約4,500万kWhとされ、燃料には年間約7万トンの未利用材が使用されている(※7)。

当初、発電した電気は固定価格買取制度を通じて域外へ供給されていたが、地産地消を進めるため、地域新電力会社として日田グリーン電力株式会社が設立された。その後、2017年9月から市役所や小中学校を含む市内38の公共施設へ電力供給が開始されている(※7)。
また、発電時に発生する温排水は、隣接地でいちごのハウス栽培を行う農家へ供給され、冬期のハウス温度維持に活用されている。温排水の利用により重油使用量を従来比で約3分の1程度に抑制し、約200万円程度の節減につながっている。

さらに、将来の木質資源を安定的に確保する取り組みとして、共同事業者である日本フォレスト株式会社は、10〜20年で伐期を迎える早生樹の導入を進めている。具体的には種苗センターを開設し、スギ・ヒノキに加え、ユーカリやコウヨウザン等の早生樹の苗木を育成して社有林への植林につなげている(※8)。加えて、大分県および日田市と協定を締結し、日田市の市有林に植林を行う活動も継続している(※9)。
※参照6:大分県日田市『新しい日田の森林・林業・木材産業振興ビジョン』P2(閲覧:2026年2月3日)
※参照7:大分県日田市株式会社グリーン発電大分『地域の活性化を担う木質バイオマス発電』P2(閲覧:2026年2月3日)
※参照8:日本フォレスト株式会社「林業種苗生産センター財津育苗場の設置及び社有林での植林について」(閲覧:2026年2月5日)
※参照9:経済産業省「山林未利用材を利用した木質バイオマス発電による電力の地産地消と温排水を活用したハウス栽培(閲覧:2026年2月3日)
日田市の事例は、森林資源の活用とエネルギー供給を結びつけることで、複数の地域課題に同時に向き合おうとする試みである。未利用材に価値を見出すことで森林整備が促され、雇用の場が生まれている。また、環境教育や農業との連携を通じて、エネルギーと暮らし、森林の関係を地域の中で可視化していることも、この取り組みの特徴といえる。
地域の資源と需要に応じて設計されたこの仕組みは、条件が整えば他地域でも応用が可能である。森林の保全と地域活性化を同時に進める一つのかたちとして、今後の展開が注目される。(株式会社リーフレイン 森林コンサルタント 金本望)