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【木造・木質建築の脱炭素化動向2026】木材の環境負荷をLCAやEPDで可視化 木質化や資源循環にも新たな動き359

Updated by 『森林循環経済』編集部 on October 13, 2026, 8:56 PM JST

『森林循環経済』編集部

Forestcircularity-editor

プラチナ森林産業イニシアティブが推進する「ビジョン2050 日本が輝く、森林循環経済」の実現を目指します。森林資源のフル活用による脱炭素・経済安全保障強化・地方創生に向け、バイオマス化学の推進、まちの木造化・木質化の実現、林業の革新を後押しするアイデアや取り組みを発信します。

脱炭素社会の実現に向け、建築物のライフサイクル全体における温室効果ガス(GHG)の削減や炭素貯蔵効果への期待から、木造・木質建築を推進する動きが加速している。7月の改正建築物省エネ法の成立・公布により建築物ライフサイクルカーボン評価制度が創設され、大規模事務所に係る届出制度等の2028年度開始に向け、国土交通省では具体的な制度設計が進められている。一方で、建材調達における環境負荷の不明瞭さや定量的データの不足、施工や性能上の壁、廃材の処理方法など、実効性を高める上での障害は少なくない。こうした状況に対し各領域で具体的なソリューションが提示され始めている。木材サプライチェーンを対象としたLCA算出手法の共同研究や、より実態に即した環境データの提供、RCと木を組み合わせた工法の開発、立地制約のあるエリアでの木造オフィス竣工、そして現場から生じる木くずを建材へと戻す完全循環型のリサイクル体制まで、脱炭素化の実効性を高める取り組みが相次いでいる。木材そのものの品質に加え、環境価値を「測り、示し、巡らせる力」が、木造・木質建築の脱炭素化を進める上で重要性を増している。

※参考リンク
建築:建築物のライフサイクルカーボンの算定・評価等を促進する制度に関する検討会 – 国土交通省

木材の「環境負荷」を可視化、森未来と東京農工大が木材サプライチェーンのLCA算出モデル構築へ

木材流通プラットフォームを手がける森未来は、東京農工大学大学院の加用千裕教授と共同で、木材製品のサプライチェーンにおける環境負荷の可視化および実効性のあるデューデリジェンス基準の策定に向けた共同研究を開始した。東京都のスタートアップ支援事業「Tokyo NEXT 5G Boosters Project」内の共創プログラム「Next 5G Social Innovation Program」を活用して実施される。森未来の過去の納品事例をもとにサプライチェーンの算出境界を厳密化し、既存データベース(IDEA等)で補完可能なデータと現場で収集すべき独自データを選別した上で、一次データ収集に次世代通信技術を活用した自動化・省力化の可能性も検証する。実際の案件に基づくLCA算出方法の比較検証や、算出結果の表示が市場に与える価値の検証へも展開していく方針だ。トレーサビリティと評価指標を構造化し調達プロセスのCO2排出量を透明化することは、建築主や設計者に対し信頼性の高い調達判断材料を提供するとともに、環境負荷の低い木材選定や建築の脱炭素化を強力に後押しする取り組みとして期待される。

議論の様子(出典:株式会社森未来)

※参考リンク
木材の「環境負荷」を可視化し、実効性のあるデューデリジェンスを実現へ。株式会社森未来、東京農工大学と木材サプライチェーンのLCA共同研究を開始| 株式会社森未来のプレスリリース

銘建工業が加工済みCLTのEPD取得 脱炭素設計に向けた環境負荷算定を支援

木質建材大手の銘建工業は、自社が製造するCLT(直交集成板)のEPD(環境製品宣言)を更新するとともに、新たに「CLT加工済み」のEPDを取得した。国交省を中心に建築物のライフサイクルカーボン評価に関する制度の具体化が進むなか、建材単位での環境データの提供は設計初期段階からの環境負荷算定に不可欠だ。同社はデータ収集精度の向上により、製品製造までの温室効果ガス排出量公表値を従来比で約20%低い数値へ再算定した。さらに、接合部や開口部などの加工工程まで含めた環境負荷を可視化する「CLT加工済み」EPDを新規取得したことにより、設計者がより実態に即したLCA算定を行える環境を整えた。構造材料における定量的データの拡充は、建築主や設計者の環境認証取得や脱炭素設計の検討を支援し、非住宅建築等でのCLT採用を後押しする重要な基盤となる。

出典:銘建工業株式会社

※参考リンク
【CLTの銘建工業】建築物の脱炭素設計を支える環境データを拡充 | 銘建工業株式会社のプレスリリース

長谷工、RC床スラブの木質化で脱炭素と施工省力化を両立する新工法

長谷工コーポレーションは、RC(鉄筋コンクリート)造建物の床スラブを木質化する「RC×木ハイブリッドスラブ工法」を開発した。型枠兼仕上げ材として木部材をRC150mm厚の床スラブと組み合わせることで、RC部材で耐火・構造性能を担保しつつ、従来のRC200mm厚床スラブと同等の遮音性能を確保。モデルプランにおいて1平方メートルあたり42kg-CO2の炭素貯蔵効果やコンクリート使用量抑制による施工時のCO2排出量削減が見込まれる。従来の200mm厚と比べて床スラブの重量を約13%軽量化でき、建物荷重の低減や天井施工の省力化にも寄与する。同社は2029年1月竣工予定の複合施設「(仮称)横浜市中区本町計画」の事務所階へ初適用する予定だ。RC造に部分的な木質化を組み込む手法は、中高層建築の脱炭素化と木材活用を現実的に広げる選択肢といえる。

「RC×木ハイブリッドスラブ工法」の施工例(出典:株式会社長谷工コーポレーション)

※参考リンク
RC床スラブの木質化で脱炭素を推進 「RC×木ハイブリッドスラブ工法」を開発 ~RC同等の遮音性能と施工省力化を実現~ | 株式会社長谷工コーポレーションのプレスリリース

名鉄都市開発が都市型木造オフィスで土地制約を克服、建設時CO2を33%削減

名鉄都市開発は、同社初となる木造オフィス「kinobi Meieki(キノビ メイエキ)」を6月に名古屋市西区で竣工させた。鉄道函体直上という厳格な荷重制限のために有効活用が難しかった名古屋駅至近の未利用地に対し、構造を地上3階建ての木造とすることで建物全体の軽量化を図り、開発を実現した。岐阜県産材を全面採用したほか、什器や内装の一部には名古屋鉄道の保有林の木材を活用。重ね張りを用いたトラス加工により、柱のない大空間を形成している。建物のライフサイクル全体(資材調達・建設・運営・解体)でCO2抑制を図り、同等の鉄骨造オフィスと比較して建設時のCO2排出量を約33%削減した。屋根上の太陽光パネルによる自家消費により年間約32.8トンのCO2削減も見込んでおり、「ZEB」「BELS 6つ星」「CASBEE名古屋 Sランク」などの環境認証も取得した。立地制約の克服と環境性能を両立した都市型木造オフィスの先駆的モデルであり、同社は今後も同様の課題を抱える未利用地などへの展開を図る構えだ。

外観(出典:名鉄都市開発株式会社)
内観(出典:名鉄都市開発株式会社)
ラウンジ(出典:名鉄都市開発株式会社)
執務室(出典:名鉄都市開発株式会社)

※参考リンク
名鉄都市開発初の木造オフィス「kinobi Meieki(キノビ メイエキ)」の竣工について | 名鉄都市開発株式会社のプレスリリース

建設木くずを床下地材にリサイクル、CO2排出量算出にも対応

パーティクルボード製造の東京ボード工業と、床下地システムを手がける三洋UDは、建設現場から発生する木くずを回収・再資源化し、再び床下地材として建設現場へ供給する完全資源リサイクルの取り組みを開始した。三洋工業・三洋UDが取得している「産業廃棄物広域認定制度」を活用し、遮音置床システム「UDシステムフロア」の施工現場で生じる木くずを東京ボード工業子会社のティー・ビー・ロジスティックスが回収。資材納入と廃材回収の一元化(往復物流)により輸送時のCO2排出も抑制する。東京ボード工業がその木くずを100%原料とした再生パーティクルボード「E・V・A(R)ボード」を製造し、再び下地材として循環させる仕組みだ。「E・V・A(R)ボード」は国際規格の「EPD International」および国内の「SuMPO EPD」を取得しており、建築物のLCA算出におけるCO2排出量の可視化にも対応する。廃材を再資源化することによって炭素固定を長期化させるサーキュラーエコノミーの実践といえる。

パーティクルボード原料用チップ(出典:東京ボード工業株式会社)
E・V・A(R)ボード(出典:東京ボード工業株式会社)

※参考リンク
東京ボード工業と三洋UD、建設木くずの「完全循環リサイクル」を共同で開始| 東京ボード工業株式会社のプレスリリース

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