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森林サービスの「入口」をどう設計するか 檜原村にみる、都市生活者を呼び込む小さな拠点の連動287

How to design the "entrance" to forest services: A look at Hinohara Village and the interconnectedness of small hubs that attract urban dwellers.

Updated by 加藤聡悟 on April 28, 2026, 11:07 AM JST

加藤聡悟

Sougo KATO

株式会社リーフレイン

金融機関でハイテク分野の企業調査に携わったのち、造園建設現場における監督業務を経て現在独立。素材産業や再生可能エネルギー、木材利用の分野に関心を持ち、近年は林業に関する企画執筆に取り組んでいる。かつて現場を通して山林作業に携わった体験を背景に、現場のリアルと産業構造の接点を探る執筆を目指している。

欧州で広がる森林の文化的活用

欧州では近年、木材生産にとどまらない森林の文化的価値や、それを生かした森林サービスへの関心が高まっている。背景にあるのは、木材価格の変動や気候変動リスク、社会の価値観の変化だ。木を切って売るだけでは森林経営の安定性が揺らぎやすくなり、木材以外の価値にも目が向き始めたのである。

欧州での調査によれば、文化サービス等を含んだ木材供給以外からの収入はいずれも2割未満にとどまり、収益の中心は今も木材だ。文化的な森林活用とは、森林を木材生産の場にとどめず、学びや余暇、心身の回復、食文化とも結びつく空間として捉えることを指す。子どもの学びの場や森林散策、食と結びついた地域利用などは、その具体例である。以上のような動向は、欧州委員会環境総局が2026年2月に公表した解説記事でも示されている。

日本で問われる森林サービスの「入口」のつくり方

欧州の発想は日本でも参考になるが、そのまま当てはめるのは容易ではなさそうだ。欧州では、森林を健康やレクリエーション、教育と結びつける動きが一定の広がりを見せている。なだらかな地形の山間部や都市部の公園整備、週末の過ごし方などの違いもあり、自然の中で過ごすことが余暇の延長として定着しているためだ。

一方、日本ではそうした前提が必ずしも強いとは言いにくく、同じ発想を導入しても、入口づくりや地域への波及をどう作るかが課題となる。日本で問われるのは、欧州の概念を参照しつつ、それを都市生活者や情報感度の高い若い世代にとって入りやすく、地域へ波及していく形にどう組み替えるかではないだろうか。

林野庁の推進事業が示す現在地

そうした観点から見ると、林野庁の森林サービス産業推進事業は、日本における一つの入口として位置づけられる。これは、森林を木材生産の場としてだけでなく、健康、観光、教育にも生かし、山村に新たな仕事や収入をつくろうとする取り組みである。紹介資料でも、体験プログラムだけでなく近隣施設があわせて示されており、地域内の複数拠点を組み合わせて利用する構成が意識されている。

実際に前面に出ているのは、企業研修、健康経営、森林セラピー、体験教育など、利用目的が比較的明確なプログラムである。こうした目的型プログラムは、森林と都市生活者を結ぶ入口として一定の意味を持つだろう。ただその一方で、森林との接点をさらに広げていくには、こうした明確な目的を伴う入口だけではやや狭い印象も残る。特定の目的がなくても、興味や雰囲気をきっかけに人が入っていける接点がどうつくられているのかにも、あわせて注目する必要がある。

檜原村にみる小さな拠点と地域の広がり

檜原村の事例は、日本で森林サービスを考える際の一つの参考になる。檜原村は、面積の93%を林野が占め、人口減少と高齢化が進んだ東京の山村である。一方で近年は、森のおもちゃ美術館、古民家カフェなどの飲食拠点のほか、サウナやグランピング施設など新しい拠点が生まれている。こうした施設では、移住者や地域おこし協力隊経験者、村出身者らが担い手となり、地元野菜、木材、工芸、特産品とも結びつきながら運営されている。

東京都檜原村地域 森林サービス産業 推進地域(出典:林野庁 Webサイト)

こうした流れは、観光や飲食の側だけで完結しているわけではない。林業の側でも、従来の木材生産にとどまらず、木材活用や森林サービスまで仕事の幅を広げる動きが見られる。たとえば東京チェンソーズは、2006年に檜原村で創業し、当初は森林組合の下請けとして間伐などを手がけていたが、その後は自社山林での伐採・搬出へ進み、さらに加工・販売といった6次産業化や、林業体験・企業研修といった森林サービスへと活動領域を広げてきた。檜原村で注目すべきなのは、観光や飲食の拠点の広がりと林業の側の仕事の広がりが、地域の中で接点を持ちながら進んでいる点である。

以上の檜原村の事例で参考になるポイントは三つある。第一に、一企業や一つの取り組みだけで完結するのではなく、地域内で担い手や小さな拠点が増えていること。第二に、木材、景観、特産品といった地域固有の資源が事業と接続していること。第三に、カフェやサウナのようなマスや流行の要素が、都市生活者や若い世代にとっての入口になっていることである。

檜原村の事例から見えてくるのは、有名観光地ではない山村でも森林との接点をつくる取り組みが成り立ちうること、そしてそれが林業の側の動きとも結びつきうることである。規模の大きさよりも、そうした接続が地域の中で具体的に現れ始めている点に示唆がある。(株式会社リーフレイン 林業ライター 加藤聡悟)

※参考サイト
森林サービス産業推進地域のご紹介:林野庁
EU forest management still focuses on most profitable services

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